2021年07月21日(2021年12月09日更新) 老後資金の準備
相続する遺産の評価額が高額だと、その分相続税も高くなってしまうのが難点です。
そこで祖父母世代はよく孫に節税対策として生前贈与をしています。
本記事では孫への生前贈与のメリットや注意点について解説します。
目次
まず贈与とは、財産を渡す人(贈与者)が生きている間に、他の人に見返りを求めずに自分の財産を渡す行為のことを言います。
ちなみに贈与は贈与者だけでなく、財産を受け取る側(受贈者)の同意が無いと成立しません。
存命中に贈与することは生前贈与といい、税金の負担を軽減する制度を活用することもできます。
生前贈与と混同されやすいのが相続です。
相続は財産を渡す側が亡くなったタイミングで財産を他の人に渡す行為を言います。
生前贈与と相続の違いは、財産を渡す側が生きているかどうかです。
もし生きている場合は生前贈与、亡くなっている場合は相続の扱いとなります。
相続について詳しく見たいからはこちらの記事を読んでみてください。
「生前贈与は節税になる」という理由で、息子や孫に生前贈与を行う祖父母は多いのですが、他にもどうして生前贈与は相続より良いのか、メリットについて解説していきます。
相続は自分自身が亡くなってからでないとできません。
しかし、自分が亡くなる頃にはある程度孫も大きくなり、相続のタイミングでは30代以上になって経済的に自立しているケースも多いでしょう。
それに対して生前贈与は生きている間であれば、好きなタイミングで財産を子供や孫に渡すことが可能です。
入学、結婚、住宅購入など30代までの孫の大きなライフイベントに合わせた経済的支援ができるでしょう。
生前贈与をする場合、年間110万円の基礎控除が存在します。
生前贈与を行った年は、毎年その基礎控除を植えることができるのです。
本来相続する財産を先に孫へ贈与して相続財産を減らしておけば相続税を軽くすることができます。
生前贈与は場合によって相続税になる時もあります。それは贈与者が亡くなる前の3年間に贈与した財産については、相続税の課税対象として加算されます。
例えば、贈与者がなくなる3年前から毎年100万円を子供に生前贈与をした場合、その300万円は基礎控除ではなく、相続税として計算されます。
しかし、贈与の対象が孫だった場合、この制度が基本的には適用されません。
生前贈与には主に5つの非課税制度が用意されています。この制度を理解することで、より相続時に発生する税金を安く抑えましょう。
先ほど解説した通り、生前贈与には年間110万円以下の贈与の場合なら非課税かつ申告不要の基礎控除枠があります。
毎年110万円分の贈与税が0円になるので、生前贈与を始めるタイミングが早ければ早いほどお得になるでしょう。
ただし、基礎控除は贈与者ではなく受贈者から見て110万円以内というルールになっています。
しかし、祖母から110万円、祖父から110万円でどちらも非課税になると勘違いする人も少なくありません。
実際は祖父母合わせて110万円に収まるようにしないと贈与税が発生してしまうので、この点にだけ注意してください。
相続時精算課税は、累計2,500万円分まで贈与税を非課税とする制度です。
贈与額が2,500万円を超えた場合は一律で20%の贈与税が課されます。
この制度は60歳以上の父母もしくは祖父母が20歳以上の子供もしくは孫に対して贈与を行う際に選択することが可能です。
暦年課税(贈与税のひとつの課税方式)を選択すると、非課税となるのは年間110万円だけです。
そのため、一度に高額な財産を贈与したい場面だと、高額な贈与税が発生してしまう可能性があるでしょう。
そこで相続時精算課税制度を利用すれば、最大2,500万円の財産を一度に非課税で贈与することができます。
この制度を利用すれば、早期に高額な財産の贈与を済ませておくことで、相続争いのリスクを避けられるでしょう。
それ以外にも、収益物件を早い内に相続して、子供に資産を受け取ってもらえる、価値が上昇する可能性がある不動産の相続税を節約できるなどのメリットがあります。
ただし、相続時精算課税制度を選択した場合、暦年課税は適用されなくなります。
こちらの制度では、20歳以上50歳未満の子供・孫に対して子育てや結婚の用途に限ったうえで、最大1,000万円まで、結婚に必要な費用は300万円まで非課税で贈与ができます。
ただ、この制度は用途が決められており、お金を引き出す際には専用口座を用意し、領収書などお金の使用用途がわかるものが必要です。
また、万が一子育てや結婚以外の用途でお金を引き出した場合や、受贈者が50歳以上になったなどの場合には相続税が課されるので注意しましょう。
制度の詳細は国税庁のホームページに載せてあるので、確認してみてください。
No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
こちらの制度の正式名称は、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」です。
その名の通りで、最大1,500万円まで、30歳未満の孫の教育資金として、最大1,500万円を非課税で贈与できる制度となっています。
教育資金として認められるのは、孫の幼稚園から大学までの入学金や受験料、学校生活で必要となる雑費に加え、習い事代や留学費用、通学定期代です。
ただし、習い事代、留学費用、通学定期代に関しては、1,500万円ではなく500万円までと制限が設けられています。
制度の詳細は国税庁のホームページに載せてあるので、確認してみてください。
No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
こちらの制度では、家を新築・増築時に最大3,000万円分の贈与税が控除されます。
住宅は高額な買い物なので、親から支援を受ける人も多いでしょう。
そこで、数百万円〜数千万円単位の支援を非課税で受けられるのはかなりお得です。
ただし、この制度は住宅を取得したタイミングがいつか、省エネ住宅化どうかなどの条件によって控除額が変動するシステムとなっているので必ず適用条件を確認しておきましょう。
また、最大3,000万円と紹介しましたが、110万円の基礎控除とも併用可能です。
したがって、基礎控除と併用すれば最大3,110万円までの控除が受けられます。
制度の詳細は国税庁のホームページに載せてあるので、確認してみてください。
No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
祖父母が孫へ生前贈与を行う場合、いくつか注意点が存在します。
注意点を理解していないと、後々にトラブルが発生する可能性があるため、しっかり注意点も把握しておきましょう。
まず注意すべきなのが、毎年同じ日に一定の金額を贈与してはいけないという点です。
贈与の場合、毎年110万円以内なら非課税での贈与ができますが、この方法はグレー扱いとなっており、毎年一定の金額を入金していると最初から相続税の節税目的で制度を悪用しているのではないかと税務署に疑われてしまいます。
場合によっては本来非課税だった分に相続税が課されてしまうこともあるので、必ず毎年1万円、1日でも金額、日付をずらして入金してください。
また、先ほど孫なら3年以内の生前贈与加算にならないと解説しましたが、場合によっては適用されてしまうことがあります。
祖父母と孫が養子縁組をしていたり、遺言書に孫が財産を受け取る旨が書かれていたりして、孫が祖父母の法定相続人になってしまっている場合がその例として上げられるでしょう。
節税目的で孫と養子縁組を結ぶケースはよくあるので、養子縁組をした場合、この制度と併用できないということも理解しておいてください。
節税目的で孫への生前贈与を行う人は多いです。
しかし生前贈与は仕組みが複雑で理解しにくく、場合によっては相続の方がお得なこともあります。
したがってよく考えて、できればライフプランの設計を行うお金の専門家(FP)などに相談したうえで生前贈与をしてください。