2022年02月17日(2022年02月17日更新) 老後資金の準備
「退職金や年金だけでは老後が不安」という方も多いのではないでしょうか。
こうした不安を和らげるために、確定拠出年金などの老後資金を準備するための制度があります。
そこで今回は確定拠出年金の概要や種類、メリット・デメリットについて解説していきます。
目次
確定拠出年金は、2001年(平成13年)10月から施行された確定拠出年金法に基づく年金です。
老後資金をつくるための制度の一つで、事業主や加入者が掛金を拠出・運用して、掛金と運用益の合計額で将来の年金受取額を捻出する制度となります。
運用した年金は原則60歳以降、一括または分割で受け取ることになります。
ちなみに確定拠出年金は、日本版401kとも呼ばれています。
これは米国の確定拠出型個人年金制度である「401K」を参考にした制度であるためです。
そんな確定拠出年金には、個人型と企業型の2種類があります。
それぞれ見ていきましょう。
個人型確定拠出年金(iDeCo)は自営業者や会社員・公務員、専業主婦(主夫)関係なく、原則として20歳以上60歳未満の全ての方が加入できる年金制度です。
個人が自分の意思で加入し、掛金も拠出し、自ら金融商品を選択して運用・管理を行います。
また、掛金が全額所得控除の対象となる点も特徴の1つです。
企業型確定拠出年金は企業が掛金を拠出し、従業員(加入者)が金融商品を選択して年金資産を運用する制度です。
企業が退職金制度の一環として活用している場合が多いです。
運用するといっても、企業等が選定した運用商品から加入者が選ぶ形になります。
また加入できるのは、企業型DCを実施している企業に勤務する60歳未満の従業員だけです。
企業によって入社と同時に自動で加入する場合と、加入するかしないか選べる場合があります。
掛金を拠出するのは企業側ですが、企業側の掛金に加えて従業員が掛金を上乗せするマッチング拠出も一定の条件下で利用可能です。
老後の生活を支える資金源としては、退職金もあります。
では、確定拠出年金と退職金にはどのような違いがあるのでしょうか。
ここでは個人と企業型、退職金3つの特徴を比較していきます。
まず、掛金の出どころですが退職金は事業主が掛金を用意します。
企業型の確定拠出年金の場合も、事業主が掛金を用意するという点は同じですが、従業員が掛金を上乗せできるマッチング拠出も可能です。
一方で個人型の場合、掛金を用意するのも個人という点に特徴があります。
掛金の運用についてですが、退職金の場合は社内積立でも社外積立でも運用責任は事業主が負う形となるのが特徴です。
また、社外積立の場合は運用方針も事業者で決めます。
一方、個人型や企業型の場合は運用方針・運用する商品を自分で決めて、その責任も個人で負うのが特徴です。
ただし企業型の場合、企業等が用意した運用商品から選ぶことになるので、個人型に比べ選択の自由度は下がります。
給付される金額についてですが、退職金の場合は企業の就業規則によりあらかじめ決められています。
そのため、規則により決まっている給付に対して積立が不足した場合、企業には掛金を追加する責任が生じるのです。
一方、個人型や企業型の場合、給付される金額は掛金と運用実績の合計で決まります。
また給付の方法・タイミングも異なります。
個人型や企業型の場合、基本的に60歳以降でないと給付されません。
一方、退職金は定年以外の退職のタイミングでも退職金を受け取ることが可能です。
ただし、退職金は原則一括支給ですが、個人型や企業型は一括で受け取るか、年金として定期的に受け取るか選べます。
最後に税制上の優遇措置についてですが、退職金は受け取った時に退職所得控除により所得税の優遇が受けられます。
個人型や企業型も給付金を一時的として一括で受け取った場合は、退職金と同様に退職所得控除による優遇を受けることが可能です。
年金として受け取った場合は雑所得として公的年金控除の対象となります。
確定拠出年金には様々なメリットがあります。
1つ目のメリットは税制面での優遇が大きい点です。
例えば企業型の場合、企業等が拠出した掛金は給与として計算されていないため、掛金分が社員の給与額から控除されます。
これにより税金・社会保険料の支払額が下がるため、事業主の負担が軽減されるのです。
個人型の場合、小規模企業共済等掛金控除の対象となり掛金は全額所得控除となります。
また、運用益が非課税なのも大きなメリットです。
一般的に、金融商品を運用して利子や運用益が出た場合、20%の源泉分離課税が課税されます。
しかし、確定拠出年金の場合、運用収益は非課税です。
さらに給付金を受け取る時は退職所得控除、公的年金等控除などの税制優遇を受けられます。
積み立てた年金資産を移動できる点もメリットの一つです。
退職金の場合、退職時に会社によって決められた金額が支払われるため、転職先への積立金の持ち運びは基本的にできません。
一方、確定拠出年金の場合は加入者は以前の企業で積み立てた資産を移動することが可能です。
転職先で企業型確定拠出年金を導入していない場合や、フリーランスになった場合は企業型から個人型への移動もできます。
公的年金受給までのつなぎとして利用できるのもメリットとして挙げられます。
公的年金受給開始は65歳からなので、一般的な定年年齢である60歳になっても、すぐには公的年金が受け取れません。
一方、確定拠出年金は60歳から受け取れるため、公的年金受給までのつなぎとして活用できるのです。
確定拠出年金はメリットばかりではありません。利用する際のデメリットや注意点もあるので紹介していきます。
デメリットの1つが60歳になるまで積立金を受け取れないことです。
確定拠出年金は、年金、一時金ともに受け取り開始のタイミングは退職時ではなく、原則60歳~70歳の間となっています。
例外はあるものの、60歳になるまで積立金を受け取れないため、不足の事態が生じてまとまった現金が必要になった時などに不便さを感じる可能性があります。
確定拠出年金は基本的に加入者自身が資産運用していくため、資産運用の成績で受け取る年金・一時金額が変動します。
資産運用が上手くいけば、運用益が出て受け取る年金・一時金が増える可能性もありますが、資産運用がうまく行かなかった場合、資産が減ってしまうリスクもあるのです。
運用商品には定期預金や保険のような積み立てた元本が確保されるタイプと、投資信託のような運用成果によって元本が変動するタイプがあります。
資産が減るのを避けたいなら、元本が確保されるタイプだけで運用するのも選択肢の1つです。
もちろん、元本確保タイプと元本変動タイプを組み合わせて運用することも可能です。
手数料がかかる点もデメリットとして挙げられます。
個人型の確定拠出年金では口座管理手数料や加入手数料などを個人が負担する必要があります。
手数料の金額はそれほど大きくありますが、長期間加入するとなるとそれなりの金額になるので注意が必要です。
ちなみに企業型の場合は、口座管理手数料などは企業側が負担することが多いです。
総務省の2019年の調査によると、2019年の転職者数は351万人と過去最多で増加傾向が続いているようです。
また2016年末の内閣府の資料によれば、50代で転職経験のない正社員の男性は30%程度と転職経験者のほうが半数を超えています。
このように転職経験者が増えているなかで、退職金との向き合い方も変化を求められています。
なぜなら退職金制度は、基本的に終身雇用のような長期勤続者の方が恩恵を受けやすい制度だからです。
例えば勤続25年未満には、退職金を大胆に減額する計算式が設定されている場合もあります。
更に退職所得控除という非課税枠も勤続年数20年以上の人を優遇しています。
転職者が増加傾向にあるなか、長期勤続が前提の退職金に老後資産形成を頼り切るのは難しいです。
考え方を変えて、自分の退職金は自分でつくるという意識が求められます。
そして自分で退職金をつくる手段の1つが確定拠出年金です。
税制面での優遇も大きく、転職しても積み立てた資産を移動できるので上手く活用しましょう。