2022年05月23日(2023年01月24日更新) 老後資金の準備
日本では長らく、60歳になったら定年退職し、65歳からは夫婦2人で年金生活を送るのが一般的とされていました。
しかし、少子高齢化にともない年金加入者がどんどん減少している現代、自分たちが老後を迎えたときに果たしてどのくらいの年金がもらえるのか不安に思っている方も多いようです。
そこで今回は、夫婦でもらえる年金受領額をいろいろな条件別にまとめました。
年金に対する不安を解消する方法も合わせて紹介していますのでぜひ参考にしてください。
目次
日本の年金は、一階部分の国民年金をベースに、二階部分の厚生年金、三階部分の企業年金など、三階建て構成になっています。
このうち一階部分の国民年金は20歳~60歳未満の日本国民全員が加入するものですが、二階部分については就業形態によって種類や有無に違いがあります。
企業年金については任意で加入するものですので、ここでは国民年金と厚生年金に焦点を絞って、夫婦の条件別に年金受領額の一例をいくつか紹介します。
なお、いずれの条件でも国民年金の未納はなく、就労している人は60歳まで勤めたものとします。
会社員の夫(平均給与40万円)と、専業主婦の妻の年金受給例です。
夫婦合計で、22.5万円の年金受給額となります。
夫は老齢年金+厚生年金を受領できますが、妻は専業主婦で勤めた経験がないため、老齢年金のみの受給です。
会社員の夫(平均給与45万円)と、同じく会社員の妻(平均給与25万円)の夫婦が受け取れる年金額の例です。
妻は出産を機に一度退職し、子育てが一段落した後に再度働き始めたため、厚生年金加入期間はトータルで10年となっています。
夫婦の合計年金受給額は、28.3万円です。
夫婦ともに会社員だった経験があるため、両方とも厚生年金を受給できます。
ただし、妻が厚生年金に加入していたのは10年間で、かつ給与も夫より少なかったので厚生年金の額に差が出ています。
自営業の夫と、会社員の妻(平均給与30万円)の夫婦の年金受給例です。
夫婦の合計年金受給額は、22.2万円です。
夫は自営業なので国民年金第1号被保険者となり、老齢年金のみの受給となります。
自営業の夫と就労経験のない専業主婦の妻の年金受領額例です。
夫婦の合計年金受給額は、13万円です。
夫婦ともに厚生年金への加入期間がないため、基礎年金である老齢年金のみの受給となります。
総務省統計局がまとめた家系調査報告(家計収支編)によると、高齢夫婦無職世帯の家計収支における消費支出(食費や住居費など)は235,615円、非消費支出(社会保険料や税金など)は29,092円で、計264,707円になったそうです。[※注1]
つまり、夫婦2人が暮らしていくには最低でも月額26万円が必要となりますが、さきほど紹介した4つのパターンの内、この条件を満たしているのは共働き夫婦世帯のみです。
では年金受領額を増やすには一体どうすればよいのでしょうか。
主な対策を2つ紹介します。
厚生年金は加入期間と平均給与額が多くなるほど受領額が増える仕組みになっています。
会社員として働いている人は、できるだけ長く勤め、かつなるべく多くの報酬を稼ぐことで年金受領額を増やすことができます。
日本の年金制度は三階建てで構成されていると説明しましたが、三階部分は企業が任意で加入する企業年金などを指します。
国民年金や厚生年金とは違って加入は任意なのですが、企業年金に加入すれば公的年金に上乗せされるため、年金受領額を増やすことができます。
一方、自営業者の場合は厚生年金に代わるものとして、任意で私的年金である国民年金基金に加入することが可能です。
老齢年金のみでは将来の生活基盤を支えていくのは難しいので、個人事業主や自営業者など国民年金第1号被保険者の方は私的年金で不足分をカバーすることをおすすめします。
[注1]家計調査報告(家計収支編)2018年(平成30年)II 総世帯及び単身世帯の家計収支
少子高齢化が進む現代日本では、現役世代が年金世代を支える「世代間扶養」では運用が難しくなります。
そこで政府は2004年の法改正にて、物価や賃金の伸び率と公的年金加入者の減少や高齢化といった社会情勢の変動に鑑みて年金額を改定するマクロ経済スライドを導入しました。
現役世代が将来受け取る年金が減りすぎないよう、年金給付額の上昇率を賃金や物価の伸び率以下に抑えることが目的でしたが、一方で年金世代に配慮するため、デフレ時は適用しないというルールを設けました。
その結果、デフレが長引く現代日本ではマクロ経済スライドが適用されることはほとんどなく、発動されたのは2015年度の一度きりに留まっています。
このままでは年金支給額の抑制が難しいと判断した政府は、物価と賃金のどちらか低いほうに合わせて年金を下げるという新ルールを盛り込んだ改正国民年金法を2021年4月より実施することにしました。
新ルールが適用されると、たとえ物価が上がっても賃金が下がれば年金が減額されることとなります。
過去10年の物価・賃金に当てはめて試算した結果によると、10年間で現行の年金より5%減額されるという結果が出たという報告もあるそうです。
あくまで試算ではありますが、現役世代が将来受け取る年金額が現行の年金受領額より低くなっている可能性は高いでしょう。
将来的に減っていくことが予想される年金の不足分を補うには、現役世代から少しでも貯蓄・資産を増やすことが大切です。
最も手っ取り早いのは収入を増やすことですが、昇進を決めるのは会社側ですし、多くの会社では副業を禁止されているので、大幅な収入アップを見込むのは難しいところです。
そのため、日々の支出を減らしたり、現在の資産を運用したりするほうが効率よく貯蓄を増やせます。
資産の運用方法はいろいろありますが、株式投資やFXはリターンが大きい分、ハイリスクでもあるので、初心者の方はiDeco(個人型確定拠出年金)などローリスクの投資から始めるのがおすすめです。
iDecoは毎月一定額の拠出を行うことで60歳以降に一時金または年金を受け取れる制度です。
しかもさまざまな税制優遇を受けられることから、税金対策にも役立ちます。
持ち家がある場合には、自宅を担保に融資が受けられるリバースモーゲージの活用も検討してみてはいかがでしょうか?
リバースモーゲージは、
などのメリットから、今シニア世代で注目されています。
持ち家を有効活用したい、老後資金にゆとりを持たせたいという方は、一度検討してみてはいかがでしょうか。
夫婦の年金受領額は2人の就労形態の在り方によって大きく異なります。
特に夫婦のどちらかあるいは両方とも国民年金しか受領できない場合、老後の生活資金をまかなうのが困難となりますので、受領額を多くしたり、貯蓄・資産を増やしたりする工夫が必要です。
まずは夫婦の年金受領額を試算して、豊かな老後を送るために何をすればよいのか夫婦で話し合ってみましょう。